980円均一DVDの起源-1940年代の贅沢品

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先日、吉祥寺の駅ビルにてDVDのワゴンセールがありました。最初はクィーンのウェンブレーが1680円っていうのに惹かれて立ち止まったのですが、奥に入ってみると、うわあ、JAZZ LEGENDSシリーズが980円均一だあ!
そこの棚、一列全部ください! って実際には言わなかったけど(^^;) ゲットしました、一列分。

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このシリーズ、スィング時代のジャズ好きにはたまらぬ逸品揃い。名だたるヴォーカリストのアルバムのライナーノーツに出てくる「、、、は○○楽団専属の歌手だったが、その後、、、」の下りを見る度に、○○楽団時代の映像って、どんなもんだったんだろう、もう見られることも無いのかなあ、などと思いを馳せていたのですが、これら980円のDVDはそういった○○楽団全盛期の時代。自らもビッグバンドに在籍している以上、これを逃す手はありません。
うちに帰ってちょっと冷静になって眺めてみると、買ったのは以下の6本。
1.Big Bands Vol.1: Stan Kenton, Les Brown, Tony Pastor
2.The Big Bands Vol.1: Duke Ellington 1952 / Lionel Hampton 1950-1951
3.The Black Big Bands: Cab Calloway, Lucky Millinder, Andy Kirk, Billy Eckstine
4.The Vocalists : Peggy Lee, Sarah Vauhgan, June Christy, Mel Torme
5.Nat King Cole 1950-1952
6.Louis Armstrong & His Friends
これらひとつひとつがいかに貴重なものかについては後に気が向いたら書くとしますが、気になるのはこれら映像の出所です。時は1940年代~50年代、日本でいうところの戦中、戦後ですね。音楽ものを集めた映画でもあったのかしらん、と解説を見ると、、、例えば1.の場合、1941年から47年にかけてSoundies用のフィルムに刻まれた貴重なミュージック・クリップ集である、との記述。読むと、このSoundiesというのは映像付きのジュークボックスだったというのですね。あ、ワカモノ諸君のために解説すると、ジュークボックスというのは食べる、飲む、遊ぶようなところに設置されていた音楽をかける機械。お金を入れて曲リストの中から1曲選ぶと、機械が自動的にレコードを引っ張り出してきてかけてくれる、という仕掛けで、ワタシが小学生の頃はまだ喫茶店やボーリング場なんかにあったものです。レコードはシングルのいわゆるドーナツ盤。や、この言い方はホントは後先が逆で、シングルレコードというのはこのジュークボックスの機械の中に格納するために一見無意味とも見えるデカい穴がど真ん中に空いていたというわけなんですね。
それにしても。祖父が防空壕を掘ったり、母がモンペはいてハリボテの飛行機を作らされていた頃、彼の国ではコインを入れればお好みのミュージッククリップを見られます、なんてことをナイトクラブやなんかでやっていたんですねえ。これはいまのいままで知らなかった。ほんとに驚きです。ちなみに、音声のみのジュークボックスの量産が開始されたのは1889年だそうで、我が国においての明治22年のこの年では、レコードはおろか、電話もまだ通じていませんでした。
ついでに2、4、5について。これらはThe Snader Telescriptionsというのが出所なんですが、これは1950年に生産が開始された初のテレビ用ミュージッククリップだそうです(詳細はこちら)。ミュージックビデオ(当時はフィルムですが)自体は、最初のものは1911年。日本はまだ明治ですね。文部省唱歌が量産された頃です。これらのフィルムを作っていた当時はアメリカの贅沢を極めたようなものだったと思うのですが、半世紀の歳月を経て、フィルムはビデオテープに、そしてDVDに圧縮されるまでになり、ついに20曲分いっしょくたにしたものが980円にて手元においておけるに至ったわけですね。歴史ってすごい。ちなみに本場アメリカでは2ドル50セント。涙が出るような値段です。
まあ、これらの映像、さすがに60年前のものともなると、歌いながらやってる小芝居なんてもったりした感じだし、全部白黒だし、まー、真剣にじーっと見入ったらたちまち飽きちゃうようなものなので、いくら貴重な映像だからといっても、需給関係から考えれば980円は妥当な線なのかもしれません。
でもワタシにとってはやっぱり宝物。特に、歌は聴いていてホントに勉強になります。いずれも実力派ばかりだし、さりげなーく歌ってるようで、よーく聞いてみると、まあ、すごいスィング感だ、とか、驚異的な息の持続力だとか、感心することばかりです。しばらくは、この980円の宝物にてネタが続くなあ。毎日家に帰るのが楽しみなりました!

Lucy

Second Lifeに棲息しつつ、いろいろと音楽を勉強中です。詳しいプロフィールはこちら http://lucytakakura.com/about-lucy

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