The Greatest Audience

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土曜日は1ヶ月ぶりのオジカルのライブでした。清瀬のS病院で行われている「土曜コンサート」に参加したもので、場所は病棟のラウンジと外来待合室での2カ所。到着すると病院のスタッフの方が「今日はありがとうございます」と、にこやかに、そしてとても親切に応対してくださり、い、いえ、こちらこそ、となんだか却って申し訳ない気分。楽屋代わりの会議室に案内されて「ここでは音出してもいいです」の記述にちょっとびっくりした後、病棟の会場へ。そこには既に譜面台が用意されていて、既にセッティング済。病院の職員の方の手際の良さにとても驚きました。
そしていよいよ演奏ですが、病棟の方は大音量はNGということで、メンバーが2,3名ずつ交代で出演することとしました。私はジャズのスタンダードの歌と、「川の流れのように」をサックスでバッキング。オーディエンスは職員の方を含めて7,8名、というところだったでしょうか。
ジャズを歌うときは、まあ、伝える力があるかどうかは別として、いつもはスウィング感とか英語という言語が持つリズム感の楽しさを伝えられたらなあ、と思いながらやっているのですが、今回はピアノとベースの3名での編成ということもあり、曲の持つメロディーラインの美しさ、ということを念頭に置きました。なおかつ、リラックスした雰囲気を出そうとか、にこやかにやろう、とか、そんなことを考えながらスタート。

050906 ライブ ところが。1フレーズ歌い終えたあたりで、会場の空気から何かをフッと受け取った感じが。オーディエンスはひたすらまっすぐにこちらを見ているのですが、彼らが何かを「発している」ことに気が付いたのです。あ、これは自分から何かを送ろう、なんていう姿勢ではダメだ、と瞬間的に思いました。今受け取ったものを返すんだ、と。それは、雰囲気とか、無言のメッセージとか、そういうものではなくて、なにかバイブレーションのようなもので、それに自然と自分が共鳴したような気がしたのです。そして、メロディーとかリズムというよりも、もっと根本的な音の響きそのものを大切にしなくちゃ、と仕切り直し。自分の声を出すということは、歌詞を発することも含めて、音を奏でることなんだ、という新たな発見もありました。
今こうやって書いていると、なんとなか言葉にできるのですが、そのときは「この、いつもと違うこれは、なんだろう?」と、終始クエスチョンマーク。そのわけのわからない状態のまま、今度は外来の待合い室へ。こちらは真ん中にグランドピアノが置いてあり、ちょっと音が大きくてもだいじょうぶ、ということで、ギター&ベースのアンプを持ち込み、簡易セットながらもドラマーも参加しての大所帯。私たちがセッティングをしていると、次々とオーディエンスが集まってきます。5,60名位にはなったでしょうか。室内でやったものではバンドはじまって以来の大規模ライブです。みなさん10分以上も前に席に着き、客席でじーっと準備の様子を凝視。静かに開演を待っているのでした。
そんな中、ふと見ると、先ほどの病棟ライブに来ていた方が、病院スタッフに連れられて、外来まで降りてきています。スタッフ同士での会話が聞こえてきたのですが、「最後の曲(川の流れのように)だけは知っていたみたいで、とっても喜んでたのね。だからこちらも」と言っているではありませんか。拍手しながら呼びかけるものではない、別の形のアンコール。心の中で感謝。
さて、1曲目、A列車。ワタシはテーマ後2コーラス目のサックスソロ。やりはじめると、セッティングの間にすっかり忘れていた病棟での体験がよみがえってきました。ここでも、病棟と同じようなバイブレーションが徐々に伝わってきたのです。あ、さっきのと同じだ、なんだ、これは、と思いつつ、やはり大切に音そのものを奏でよう、という思いでやらせていただきました。そして1曲目が終わると、予想以上に力のこもった拍手と笑顔が。
ここに来る前、この「土曜コンサート」は、みなさんの気分転換の場なんだろうな、同室の人のつきあいでなんとなく来ている人も多いに違いない、リラックスした楽しい雰囲気でやろう、と思っていたことが、とんでもなく的はずれだったことを実感しました。開演前から、まだかまだかと待っていて、演奏がはじまると、ものすごい集中度と熱心さで聴いており、しかも笑顔でエンジョイしてくれるとは。私は、聴衆のあんなに真剣な表情と笑顔を同時に見たのははじめてでした。高らかな笑い声や歓声には無い、静かな情熱。本当に音楽が好きな人たちが集まってくれたんだなあ、と。終演後、多くの病院スタッフの方に「今日はありがとうございました」と声をかけていただきましたが、いや、そんな、お礼を言うのはこちらの方です、と本当に恐縮。
その後、帰宅してすぐに、興奮冷めやらぬまま、相方にこの日の出来事を話したのですが、じーっと聞いていた彼が、
「それって、昔外タレが日本のオーディエンスはすばらしい、って感動して帰ったのと似てるかな」
「そか、すごく静かなんだけど、熱いっていう感じはそうかもしれないね」
じーっと待っていて、一音も漏らすまい、と静かに真剣に聞いてくれる観客。そして、演奏者にきちんと敬意を払ってくれる優秀なスタッフ。そんなところは通ずるものがあるのかもしれません。もちろん、私たちが外国アーティストと同じだなどと恐れ多いことは思いもしませんが、真剣な観客と真摯なスタッフが如何に演奏側を突き動かすのか、ということにはじめて考えが及んだ日となりました。あらためて、土曜日に病院で出会ったすべての人たちに感謝、であります。 本当にありがとうございました!

Lucy

Second Lifeに棲息しつつ、いろいろと音楽を勉強中です。詳しいプロフィールはこちら http://lucytakakura.com/about-lucy

The Greatest Audience」への5件のフィードバック

  • 2005年9月6日 05:59
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    いいお話ですねえ。
     以前、5歳から10歳あたりを中心にした子供たち40人くらいを前に、朗読と演奏したことがありまして、そのときの感覚に似てるかも。
     「幸福の王子」や「星の王子様」読みながらギターやダルシマー弾いてたんですが、つぶらな瞳たちにじーっと凝視されてると、緊張感もあるんだけど「力もらってる」感覚のほうが強かった。
     大人相手に 「耳なし芳一」読みながらエレキ弾いたとき(これはこれで面白かったんだけど)に比べて、終了後の疲れ方がぜんぜん違ったのを覚えてます。

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  • 2005年9月6日 07:41
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    →わたるっち
     「力もらってる」感覚、わかる、わかる! この体験がなかったら、その一言だけではいまいち理解できなかったかもしれません。でも、子供さんだと、また違ったパワーがありそうですねえ。
     そういう観客になる、っていうことも考えてみようかな、なんて。

    返信
  • 2005年9月6日 08:28
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    すてきならいぶだったようですねー
    おつかれさまです
    ジャズはとくにはじめての人でも不思議と同調できるとこがある気がします。
    音を楽しみたいって気持ちで
    だれもがそれぞれに楽しめるのかなぁ
    でもお客さんのバイブレーションを感じてそれにあわせて対応できるゆかりんさんもすばらしいと思います。
    いくら観客がすばらしくても、一方的におしつけるような演奏だったら、こんな風にならないわけだし

    返信
  • 2005年9月6日 10:41
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    土曜日はお疲れ様でした。確かに観客の皆さんから伝わってくる熱いものがありましたね。それに応えるゆかりんさんの表情も凄くよかったですよ。ちなみに対応いただいた病院スタッフの方々は担当の女性以外、皆さんボランティアだったんですよ。皆さん、自分も役に立ちたいという気持ちが凄くでていて心地よかったですね。また来てくれとのアンコールもいただきましたので、機会がありましたら、またみんなで行きましょう。

    返信
  • 2005年9月7日 00:28
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    →桜子ちゃん
     ジャズはスタンダードだとメロディラインがシンプルなせいですかね、親しみやすいのかもしれませんね。なんだか無我夢中だったんで、結果、どうだったのか、ちょっと心配ではありますが。
    →ぽんぽこさん
     ありがとうございますm(__)m そうか、みなさん、ボランティアの方々だったんですねえ。またお誘いいただけるとは、なんてありがたいことでしょうか。是非うかがいたいものですね!

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