今時のバンド活動(3)ーレコーディングその1

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レコーディング編のその1は、「レコーディングは自分たちでできるのか?」についてです。

 さて、バンドのオリジナル曲も増えてきて、そろそろアルバム制作の段階になってきた、、、となると、レコーディングをやることになります。レコーディングをどのように行うか、は大きな悩みどころですね。

 レコーディングスタジオに入り、エンジニアさんにレコーディング作業をお願いするとなると、それなりに費用がかかります。昔に比べたら機材は超安くなり、ノウハウもググればかなりの知識が得られるのですから、えーい、自分たちでやっちゃえ、その方が安いし速いし、となるのはわかるのですが、、、

 レコーディングするとなると、その後は、その録音をどこかに発表するわけですよね? MySpace? Audioleaf? あるいは自分たちで作ったホームページに貼る? そしてゆくゆくはアルバムを作成して、CDを販売したり、iTunesなどでダウンロード販売したり、、、いやいや、サイトに貼り付けるものだったら、デモってことで自分たちでやって、アルバム作成のときにはプロにお願いすればいいんじゃないの?

 いろんな考え方があると思いますが、ワタシの経験から判断しますと、どんなサイトでも、サイトに音源を貼り付ける時点でCDと同等のクオリティにすべきであるし、それならば、やはりレコーディングはその道のプロにお願いすべきだと思われます。

 ワタシがやっているインターネットラジオでは、著作権を自分たちで管理しているいわゆるDIY Musicianの曲をかけていますが、その関係で、いろいろなバンドからメールだのtwitterだので「うちらのバンドの曲をオンエアーしてくれませんか?」というオファーが来ます。また、ワタシ自身が、どこかにいい曲ないかなあ?と様々なサイトを回って探すこともあります。そんなとき、まずはじくのが「radio ready」でないもの、、、音のバランスや音質がいまいちで、ちょっとリスナーさんに聞かせるのはなあ、、というものですね。そういう曲は、最初の数秒を聞けばわかるので、すぐにオンエアー候補からはずしてしまいます。そして、一度はずしたら、再びそのバンドの曲を聞くことはなくなるわけです。不思議なことに、そういうバンドほどなんだか覚えていたりして、「新曲発表でーす」なんてメールをもらっても、「ああ、あれか」と曲を聞かずにスルーしてしまうわけですね。

 まあ、ワタシなんぞのラジオなど、どうでもいいわけですが、でも、プロの放送局や、ライブハウスのブッキング担当の方にとっても同じことなんじゃないでしょうか。第一印象で、「あ、これはスルーね」と「2度と再生しないリスト」に入れられてしまったら、、、いや、オレの曲はまず歌詞の良さをわかってもらえればいいんだ、とか、ギターテクだけ聞いてもらえれば、使ってもらえるんじゃ、、いえいえ、担当者はバンドやアーティストが育つのを待っていられるほどヒマでもないし、お人好しでもありません。すぐに別のアーティストを探せばいいわけですから。

 友人にデモを配るのも同じです。後で正式にレコーディングするんだけど、、、と配られたCDやデータ。これがもらった方のiTunesに入れてもらえる、というところまで行くのも奇跡的な成果だと思うんですが、、、まあ、それはともかくとして、運良く入れてもらえたとしても、電車や車の中でiPodをシャッフルしているときに、なんだか素人くさいサウンドの曲が流れてきたら、、、はい、飛ばします。次の曲にいっちゃいます。そして恐ろしいことに、iPodの「中の人」はそれを覚えてしまうんですよね。「あー、この曲はいつも飛ばしてるなあ。もう出すのやめた」って。このようにして、同じく「二度と再生しないリスト」に入っちゃうんですね。

 そんなこと言ったって、レコーディングを本格的にやるとなると、お金もかかるし、とても無理、、、でもバンドのページに音源がないのはどうも、、という場合はライブの録画のYouTubeを貼り付けた方がずっといいと思います。画像がつけば、「なにこれ何歌ってるのかよくわかんないけど、パフォーマンスおもしろい、見てもいいかな」という可能性もなきにしもあらず。中途半端なPVを作るより、よっぽどいい広報素材になるかもしれません。会場の雰囲気も伝わりますしね。

 それでも、どうしても自分でやるんだ、という方のために、参考になりそうなアーティストをご紹介しましょう。

Matthew Ebel

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レコーディング、ライブ、サイト運営、ファンリストの管理とダイレクトメール発出、グッズ販売など、すべてをほとんど一人でやってます。ライブを一人でやることも多いようですね。レコーディングについても、「Beer & Coffee」というアルバムは「MacとGarage Band、そして、若干の友人の手伝い」だけで作ったそうで。彼が出演したポッドキャストでは、「歌の録音も含めて、ほとんどキッチン・テーブルでやったよ。ソフトは、サポートのギタリストがどうしてもPro Toolsを使いたいって言い張るからPro Toolsも使ったけど、Garage Bandだけでも十分できたと思う。」と言ってました。  アルバムの詳細についてはこちらに掲載されてます。 2005年当時、英語圏のポッドキャストでヘビロテでオンエアーされ、「Pod Starの誕生」と高評価を得ていた「Drive Away」、聞いてみて下さい。ワタシもこの曲はお気に入りで、自分のポッドキャストでも何回もかけました。iTunes Storeのリンクはこちらですので、 他のアルバムもチェックしてみてはいかがでしょうか。

 こちらはThey Got the Money という曲のライブ録画です。

 ライブの録画があれば十分プロモーションになりますよねー。

 ちなみに、自分でレコーディングしたものは、Songs from the Vault, Vol.1」というアルバムの3曲目に入っています。試聴はこちら。聞き比べてみるとなかなかおもしろいかも。

 要するに ・自分だけでやっており、

  • 参加プレーヤーが極端に少ない
  • ヴォーカルのテクニックが抜群。ピッチが正確、歌詞がクリア、声の通りが良い、ということで、ドライのままでもほとんど無修正で使える
  • 全部のパートを自分で打ち込める、もしくは 、
  • マイクの立て方とか、ミキシングのやり方とかの技術を既に習得している

というような条件に合ったアーティストなら、Garage Bandだけで自分でできちゃうんでしょうねえ。ちなみに、うちの同居人がやっていたPresident Gasというバンドのレコーディングは自分たちでやったのですが、これはヴォーカルのミー氏が2番目の条件に、ギタリストのghid氏が4番目の条件に合っていたからこそできたのではないでしょうか。録音のみでしたら、ほとんど一発録りでスルスルと進んでましたしね。

 Plastic Soul Bandのように人数が多くて、サックスという吹きものまで入ってくると、それはもう、自分たちだけではとてもむり。レコーディング、ミキシング、マスタリングまで自分たちでやっていたら、その担当者はよほどにマルチな人間でないかぎり、自分の演奏には集中できなくなってしまうでしょう。

 というわけで、次回の記事は、レコーディングをどこかにお願いする、ということについて、書きたいと思います。

Lucy

Second Lifeに棲息しつつ、いろいろと音楽を勉強中です。詳しいプロフィールはこちら http://lucytakakura.com/about-lucy

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